【3389】 ○ 吉田 寿 『働き方ネクストへの人事再革新 (2021/07 日本経済新聞出版) ★★★★

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ウィズ&アフターコロナ時代の人事の現況&見通しを俯瞰するのにテキスト的に手頃。

働き方ネクストへの人事再革新.jpg 『働き方ネクストへの人事再革新』['21年]

 本書は、新型コロナウィルス感染症の蔓延とその対策のなかで、雇用・人事の現下の状況はさながら「人事事変」とでも呼ぶような局面にあるとの前提に立ち、雇用・人事の「いま・ここ」を俯瞰するとともに、次世代の働き方と人材マネジメントの「これから」を予測し、そのあるべき姿を提示しようとしたものです。

 第1章で、新型コロナ禍による強制的なリモート環境で雇用・人事がどのように変わったかを、統計や企業事例を交えて俯瞰し、第2章では、そうした今、従来の「日本型雇用」からの脱却は不可避であり、(成し遂げたい目的を明示し行動する)「パーバス・ドリブン経営」へのパラダイム・シフトが起きているとしています。また、「ジョブ型雇用」とは何かを説き、改めて職能資格型・職務等級型・期待役割型という人事の3つのバリエーションとそれぞれの強み・弱みを解説した上で、ジョブ型雇用を取り入れる際の留意点を挙げています。

 第3章では、リモートワーク・マネジメントを機能させるにはどうすればよいか、オンライン会議の常設など4つのポイントを挙げています。さらに、リモートワークに紐づけてジョブ型と併せて話題となる「成果主義」について、その正しい定義を示し、成果主義は結果主義とは異なるとする一方、導入に際しては「払拭しがたい年功意識」からの脱却を説いています。また、企業は今後、リアル・オフィスとリモートワークのベストミックス(ハイブリッド)を模索していくだろうとし、そうしたなかオフィスの役割や人々の働き方はどう変わっていくかを予測しています・

 第4章では、1on1ミーティングのブームの背景を分析し、1on1ミーティングに話し合うべきテーマを挙げるとともに、「心理的安全性」の確保の重要性を説いています。また、「アジャイル(俊敏な)人事」や「リアルタイム・フィードバック」とは何かを解説し、個人の行動変革と成長を促し、組織成果を最大化する「パフォーマンス・ディベロップメント」という概念を紹介するとともに、1on1を加味したパフォーマンス・ディベロップメントの例を紹介しています。

 第5章では、これからの時代のマネジメントとリーダーシップの在り方をテーマに、「感情的知性(EI)」を開発して仕事に活かす方法や、心理的安全性を確保して「恐れのない」組織をつくることを説いています。また、状況対応型リーダーシップなど従来型のリーダーシップ理論の活用方法に加え、リーダーはメンバーの「安全地帯」になるというセキュアベース・リーダーシップや、すぐれたリーダーは「謙虚」なものであるというハンブル・リーダーなど、比較的新しいリーダーシップ理論も紹介しています。さらに、令和型上司はコーチ型上司を目指すべきであるとしています。

 第6章では、HRM → SHRM → タレントマネジメンと変遷してきた人材マネジメントはさらに進化し、2020年代にはデータ化しにくい社員個々のソフト面に配慮した「ピープル・マネジメント」が主流を占めるようになるだろうとしています。また、これからのコア人材の鍛え方を説くとともに、これからの社会は「企業中心社会」から「個人中心社会」になっていくだろうとしています。

 タイトルに「再革新」とあるように、読んでいて、過去にもあったようなトピックが、言葉を変えて再び注目されていたりもすることもあるように思いました。言葉に振り回されるのも良くないですが、人事パーソンとして知っておくべき言葉を知らないのもどうかというのもあります。そうしたことも含め、ウィズコロナ時代の人事の現況や、アフターコロナ時代の人事の見通しを俯瞰する上で、テキスト的に手頃と言うか、丁度いい本であるように思いました。

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This page contains a single entry by wada published on 2024年1月26日 01:04.

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